PROPS第4回レポート(感想編)

前エントリーでは運営内部の様子について触れたので、今回は討議の内容について感じた所をまとめていきたいと思います。

PROPSのサイトに、白石卓央さんによるレビューが掲載されております( http://props.a-ri.jp/1043 )。こちらを読んでいただけると今回の議論が俯瞰できるようになっています。私は「よく分かっていない人」の視点から書きますので、できれば先に白石さんのレビューを読んでいただけるとよいかなと。

午後3時、討議開始です。まずAパートでは、当日登壇いただいた5名のゲストスピーカーの皆さんのご紹介から始まりました。

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あゆみリアルティサービス取締役の田中歩さんからは、売買、賃貸それぞれの不動産仲介で取引がスムーズに進まない仕組みが、仲介業者の都合にあわせて形成されていることを端的にプレゼンしていただきました。

またUR都市機構の中田誠さんからは、既存の公団住宅をコミュニティの新しいあり方から考えて改修する「ルネサンス計画」について紹介していただきました。

青山リアルティサービスの服部毅さんは金融業界から不動産鑑定へ入ってきたプロフィールを語っていただき、今回は不動産鑑定の立場から、中古住宅の流通市場についてお話していきたいという事を語っていただきました。

ルーヴィスの福井信行さんは、中古家具の買い付け、販売を行ってきたところから家業の不動産屋を泣く泣く継ぐことになったという経歴から、なぜ中古住宅は修復して価値を高めて販売する仕組みがないのかという疑問をもつようになったという現在につながる原点の部分を紹介していただきました。大学時代は無気力でニート同然に過ごしていたという自己紹介から独特な感じがあり、少ない労力で本質を射すような感覚を持っているように感じました。

サンゼロミニッツの野々村範之さんからは、IT技術者から地域情報サイトを立ち上げた経歴を紹介していただき、現在公開している「地域情報スカウター」というサイトのデモンストレーションをしていただきました。これは不動産物件の価値を周辺の商店、飲食店、教育施設の充実度、保育園の待機児童数などから測定しているサイトで、現在の立地重視の不動産価値測定のあり方に変化をもたらす仕組みの例として取り上げました。

休憩時間では、今回もバーカウンターでつくばねファームさんのイチゴ、コエドビールなどステキな飲食物が提供されました。今回はゲストの方もビールを注文してもらって、後のトークもよりフランクになったかなーと思います。

SDIM1448(写真:カフェの準備中、イチゴのヘタを取っています)

Bパートの質問の中では「住宅の真っ当な取引を妨げるもの」「今注目している不動産評価のポイント」についてお話いただきました。 住宅の真っ当な取引を妨げるものについての答えの中で、中古住宅と新築住宅が価格的にバッティングしているという話があり、それが以前建っていた住宅を取り壊して、土地を分割した上で小さな住宅を作っていて、その小さな新築住宅が中古住宅と価格面で比較されるという話が興味深かったです。価格の安さは絶対的な指標でありながらも、中古住宅への不安感というのはなかなか乗り越えにくいものなのだということを感じるとともに、そこを乗り越えることで豊かな住環境は得られるのではないかとも感じました。

また、住宅を求める人達が中古住宅を避ける要因の一つに耐震性への心配があると思います。この点でも例えば旧耐震の時代に建てられた公団住宅であっても、中層住宅で壁式構造という公団住宅の構造の特性ゆえに現在の耐震基準を満たすものもあるというお話があり、一概に古い建物だから耐震性が良くないのではなく、個々の建物を診断して保証することが大事なのだと気づきました。ここをチェックすればむしろ低価格で耐震性を満たす中古住宅を得ることも可能なわけで、意識次第で得することができるというのも中古住宅の取得を楽しめるポイントなのでしょうか。

この際に、きちんと建物を診断してもらえる制度として住宅ではホームインスペクション、商業建築ではエンジニアリングレポートの存在が重要になります。仲介業者の側からも、技術的な裏付けをもって、安くて良い物件を紹介するという意識を持ってもらえると嬉しいですよね。立地が重要なのは当然ながら、住宅の機能面への意識を問うことが信頼できる仲介業者を探すときのポイントになるのだと感じました。

Cパートは会場からの質疑に対して登壇者のみなさんが答える形で進みました。この中では、登壇者の皆さんが実際にどのような形で自分の住処を見つけているのか?建築業界と不動産業界との間で新築住宅と中古住宅との市場バランスについて議論が進まないのはなぜか?というような質問が投げかけられました。

今回のテーマには「マーケティング」という言葉があったけれど、既存のマーケット、潜在する大量の需要を狙っている人がいなかったのが意外でしたが、発言を聞いているとまあそうだよな、と思う部分が強くありました。現状の社会では規格型の住居を大量に供給する必要性はないのであって、ならばどのように新しい、小さなマーケットを作り出すことができるかという点に意識が集中しているのだなと実感することができました。

この点では特にURの中田さんからもコミュニテイをつくるという意識を元にお話されているのが印象的でした。これまでの大量供給された団地のあり方を変えるための実験をできるのは自分たちしかいないという自負があっての事だと思います。これを、URだからできることだと鼻白むのではなく、民間の中古住宅の転換のためにもここから得られる知見をウマいこといただいちゃうぐらいの意識で進んでいただけるといいんじゃないかなーと感じました。

また、小さなコミュニティをマーケットに育てていく仕組みとして、田中さんから木賃デベロップメントの仕組みを説明されていたのがとてもおもしろかったです。「おうちに触れてみよう」という提案に納得しました。

私の話をすると、建築の設計から施工まで一通りやってみてもあまり建物が好きになれる感じがしなかったのだけど、今築30年を越えるホテルの建物を管理している中で、設備や内装の不具合をつかんで補修していく過程から、建物への愛着を深めることができるんだなという実感を改めて感じています。

そこから一歩足を踏み入れて、補修するだけでなく自分の生き方に合った形に建物をカスタマイズ出来る事、そのスキルを少しずつ獲得していくことをコミュニティにつなげていくという循環をもっている仕組みが木賃デベロップメントだということです。この仕組みを聞いていると、心の結構深い所からワクワクしてきました。

古くとも、荒れていようとも、今ある建物をきちんと目で見て評価すること、そしてその評価は専門家だけのものでなくエンドユーザの側からも対話できる形であること。そうすることで、住宅が生きる場所として真価を発揮するのではないかと感じました。

もう一点。自分が信頼できるエージェントを探す場として、PROPSのような場を利用できる、という野々村さんの提案を聞いておお!と膝を叩きました。IT技術者としてこれからバイヤーズエージェントと買主を結びつけるシステムをつくりたいというオープンな部分と、最終的に「この人なら任せられる」と自信をもてるクローズな場とのバランスをどう取るかというところを考えておられるのではないかと思いました。これが成立すれば住宅を買うという大変な行為に対して、良い感じに背中を支えられるでしょうね。

PROPSは広いウェブに投げかけるつぶやきから繋がることができる敷居の低い会だけど、住宅に対して、土地に対して、建築というものに対しての見識をベースにしながらも、実際にエージェントの人となりを知ることができ、つながりを持てるクローズな感じを作れるようにすればこの場所にはさらに強い潜在力があるのかもしれないと感じることができたのが大きな収穫になりました。

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